まずはおさらい
先日の続きです。
まず考えなければならないこととして、高校授業料完全無償化という施策は、私立高校を運営する学校法人に対して、文科省なり教育委員会なりが価格決定権を奪うという意味で憲法上保障されている営業の自由(憲法22条1項)を侵害する虞があることです。有り体に言うと民業圧迫です。
これにより私学経営が行き詰まりのは必至です。
分かり易い例として家電メーカーがあります。家電量販店により小売価格の決定権を握られたせいで経営が行き詰まった事例があります。家電メーカー=学校、家電量販店=文科省及び教育委員会と考えれば分かり易いでしょう。
家電メーカーの衰退により日本の製造業の停滞・衰退が深刻化しましたが、私立高校の運営の行き詰まりにより、教育の多様性、ひいては各地域における文化レベルの低下の懸念があると考えられます。
にも関わらず、前原氏を初めとする維新のお歴々がこれに拘るのは、短絡的な人気取りではないかと言わざるを得ないのではないか。
これが前回のおさらいです。
基準を変えれば良いのでは~定額給付ではない方法
まぁ、短絡的な人気取りでも、一定の人気があるというのはそれなりにニーズがあるからでしょう。
けれども、今の議論のあり方では一方的に私立高校の価格決定権を侵害する事になります。
更にここに来て、自民党の39.6万円の他に、立憲民主党が対案として45万円を提案してきましたが、何の解決にもならないのは火を見るより明らか(と言うか、対案どころか水で薄めたような内容、何の工夫もありません)。
まぁ端から見ていれば安物の競りでもやっているのかと言いたくもなります。
商売柄バカにするだけって訳には行かないのでつらつら考えてみたのですが、定額を示すこと自体が実は価格決定権を侵害することになっているのではないかと思います。
具体的にどうすれば良いかというと、授業料のうちの6割なら6割、5割なら5割という形で補助すれば良いのではないかと言うことです。つまり授業料が70万円なら、維新案だと上限の63万円を超える分の7万円は学校側が負担しろなんてバカな話(しかし、前原氏は京大法卒と言うことですが、今までの議員活動を見ても思うのですが、その割にリーガルマインドが乏しいと言わざるを得ませんよね)になりますが、この発想で仮に6割援助だとすると28万円分は家庭負担ということになります。年額28万円というと月額で2.5万円弱。私立高校の存在意義と家庭における教育負担のあり方を考えてその当りの具体的な数字はパブリックセクター(文科省・教育委員会)も私立高校側も考えれば済む話であり、その意味で学校側の価格決定権を過度に侵害するものではないと言えるでしょう。少なくとも「安易な人気取り」ではないはずです。
もうひとつのメリット~「奴ら」に嘴を挟ませるな
実はこの「割合で決める」案のメリットはもうひとつあります。
学校側は経済環境その他の要因で授業料を決定するはずですが、昨今のインフレなんかを考えると柔軟に対応出来るというのがまずあります。
これが現場レベルの話だとすると、政治のフェイズで考えるならば、定額の支援額で決めた場合経済状況が変化する度に一々法改正の必要に迫られるはずです。
これに対して支援率で決める場合、原則自動的に支援額が決まるのでその必要がありません(確かにバカ高い授業料を設定する学校も考えられますが、保護者の満足度が低ければ自然淘汰されます。これは資本主義の原理です)。
日本には現在私立高校は約1200程度しかありません。授業料のデータを集めるのは役所の資源の大きさを考えると造作もないことであり、その意味でも尚更支援率で決めるべきじゃないかと考えられます。
もう少し具に見ると、定額の支援額で決める場合、一々法改正しなければならないと言うことですが、これはその都度財務省にお伺いを立てなければならないと言うことであり、恐らくその都度突っぱねられる可能性が高いでしょう。昨今話題になっている「年収の壁」「103万円の壁」問題を見れば容易に想像できると思われます。
そうなると、私立高校の学校経営が行き詰まることになりますが、それだけに止まらず保護者や生徒にも精神的・経済的に多大な負担を及ぼしかねないことになります。
昨今、色んな制度設計論が出て来ていますが、100点満点の制度なんてありません。けれども、性善説を前提にした制度設計は低い評価しか与えられないのは間違いないでしょう。
そこのところをちゃんと分かった議論をしていただきたいところですよね。
それが社会全体を見据えた制度設計というものだと思います。
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