これで良いのですか?
今日お話しするのは、こちらがマクロ論だとすればどちらかというとミクロ論のような内容です。
30年近く続くデフレ不況、経済格差の拡大、少子化の深刻化、「ハラスメント」という言葉の跋扈、文科省によるICTの急激な導入の要請…、書いていてこちらが厭な時代です。その中で学校経営にとっても年々厳しい環境になっています。
こうした中で中堅進学校と呼ばれる私学においては、様々な取組みがされています。よく見受けられる事例としては、予備校を経営する受験産業の大手業者のコンサルティングを受けるというものです。
いくらかの異同はありますが、大体以下のようなケースがあると思われます。
パターン1;模擬試験の運営をしている予備校によるコンサルティング
①割引を前提に模試を受けるように勧誘(団体割引で1.5~2割程度の割引)
②割引を前提に自社で制作した参考書・問題集の購入を勧誘(やっぱり1.5~2割程度の割引)
③補講をするとなると予備校から講師を派遣
④教育現場の職場環境の改善の為と称して臨床心理士の常駐派遣
以上が主なサービスの構成要素
パターン2;大手個別指導教室によるコンサルティング
①まず空いている教室を個別指導教室に模様替えするように促す
②自社から派遣した講師による希望生徒への指導
③業者としては学校からクライアント料を取るが、それとは別に希望生徒から月謝を徴収(相場は月額7000~1万円程度、理由は何であれ立派に料金の二重取りです)
1学年250~300人程度の学校の場合、それぞれクライアント料は年間で3500~4000万円前後というところでしょうか。これだけの金銭があれば給料のアップをしてくれても良さそうだし、指導力がある先生を3,4人は雇えます。
けれども、そうはならない。ならないだけなら未だしも、成果も上がらない場合が多いようです。
パターン1の場合、本当に必要なサービスは精々①だけでしょう。ビッグデータに関して様々な見解があるようですが、道具は使い方次第で有益的にも害悪にもなります。使い方さえ考えれば良い、つまり、字面だけではなく成績分析を生徒本人がちゃんとやれば済む話です(個人的には、進路指導などという職務に従事する教職員は原則不要だと思います。人間、16、17にもなれば自分の行く末を考えられる能力はある筈だし、今の時代、必要な情報は殆どの場合クリックひとつで入手できますから)。
パターン2に至っては全く不要、どころか害悪でしかありません。個別指導教室の指導者の時給は精々1700円程度、まぁ1500円くらいが相場ですが、月給換算にして24万円、新卒初任給程度の額で良い指導者を雇えるというのなら、こんな罰当たりな話はありません。得するのは何ら成果が上がらなくても巨額の売上を得られる業者だけです。
なんでこうなるの?
大昔のコント55号のギャグのようなサブタイトルですが(知らないならスルーして下さい(笑))、勿論、こうなったのには様々な背景が考えられます。
経営環境の激変による経営者(理事長・校長)の焦りというのもあるでしょうし、労使間の信頼関係が構築されていないこと、教職員同士に潜在的に不信感が募っている場合もあるでしょう。あるいは今流行の(?)派閥争いもあるかもしれません。
遠くから見ていて、大概の場合、労使間でも同僚同士でもチキンゲームをやっているのではないかと思います。結局、皆分かってるはずなのです、このまま行けば間違いなくご飯を食べられなくなることが。けれども、メンツとか拘りとかがあってなかなか言い出せないのでしょう。
教育コンサルティングを招くにしても、何をするにしてもまずはそこから風穴を開けることじゃないかと思います。まずは全校一体の結束を築かなければ話になりません。
「指導力」とは?
「良い生徒」が集まる「良い学校」には「良い先生」が沢山いるはずです。
「良い生徒」とは遊びでも勉強でも主体的に取り組む生徒を言います。
「良い学校」とは生徒の主体性を尊重しながら円滑な運営を実現できている学校を言います。
では「良い先生」とはどういう先生を言うのでしょうか?
面倒見の良い先生?高学歴の先生?親しみやすい先生?まぁ色んなイメージを抱くのは自由でしょうが、私共が定義するのは「生徒や保護者にとって最も身近な文化人」です。
益々分からなくなったと言われそうなので、言い方を変えると、「指導力のある先生」です。
ここで「指導力」とは何かが問題となると思います。生徒一人一人につきっきりで担当教科を指導できることが高い指導力なのでしょうか?
勿論、答えはNoです。
高い「指導力」とは、担当教科の指導を通じてその教科の面白さを余すことなく生徒に伝授することが出来、そのことで生徒が頭を使う事が楽しいと思うようになれる能力を言います。
では、高い「指導力」はどうすれば培うことが出来るのか、それはまた後日ということで。
2 thoughts on “中堅進学校である私学に勤務する先生方へ~指導力とは”