肩書きのバーゲンセール?
先日、校長先生のお仕事に関してあれこれ考えていたのですが、その際に学校組織ってそれぞれどんな役割を持った先生がいるのかなとちょっと気になりましてね、それでこの記事を書くに至りました。
なお、以下展開する議論の基礎となる情報はこちらから入手したものを基にしております。
学校、あるいは職員室の先生方の肩書きを見るとあれこれ多いなと思わなくもありません。
校長、副校長、教頭、教務主任、主幹教諭、学年主任・・・。どれがどうなっていて、誰と誰とを比べるとどちらが偉いんだと思いますね。文部科学省のお役人もよくこれだけあれこれ肩書きを考えられたものだと思います。本当、肩書きのバーゲンセールかよ、と。
まずは肩書き毎の仕事の説明及び整理をしつつ、微妙な役割の違いに関しても考察したいと思います。
教務主任と主幹教諭
法令によると、教務主任とは、校長の監督を受け、教育計画の立案その他の教務に関する事項について連絡調整及び指導、助言に当たる役職を言います。
主幹教諭は、校長及び教頭を助け、命を受けて担当する校務の一部を整理し、一 定の責任をもって取りまとめ、他の教職員に対して指導・助言及び指示をします。
似たような役割だなとも思わなくもありませんが、違いがあるとすれば、①教務主任は校長の監督を受けるが主幹教諭は校長及び教頭を助けること②教務主任の主な任務は教育計画の立案に関する事項であるのに対して、主幹教諭のそれは校務の一部の整理及び取りまとめであることです。
ちなみに教務主任は原則常設ですが、主幹教諭は任意設置とのことです。
とまぁ、ちまちま書いたのですが、①に関して教務主任が、校長と異なり、教頭の監督を受けないのは教頭が実際に教壇に立つことがあり得るからであると思われます。その場合、教頭が教務主任を監督するという事になると、両者の間で教育計画に関して意見の齟齬があった場合、いつまで経っても方針が決まらない虞もあるからでしょうか。
②主幹教諭の任務は校務の一部整理及びとりまとめということですが、ここに言う「校務」に教育計画が含まれるかが問題となりそうです。教務主任が原則常置であり主幹教諭が任意である事、加えて教務主任と主幹教諭の間に教育計画をめぐって意見の対立があった場合のことなどを考えるならば「校務」に教育計画は含まれないと解するのが常識的ではないかと思われます。
なぜこういう細かいことに拘るかというと、組織において必要なのは指揮命令系統の一元化と各員の役割の明確化であるからです。
教務主任と主幹教諭、どう違うの、どちらの方が上なのって話になると思います。恐らくは両者間での年功によって実際の関係は決まることが多いと思いますが、少なくとも法の立て付けから由来する職掌においては上下の差はないはずです。
分かり易い譬えで言うと教務主任が営業企画部長なら主幹教諭は総務部長、あるいは教務主任が営業担当の担当部長なら主幹教諭は総務部長でしょうか。教務主任も主幹教諭も少なくとも法令上は他の教職員に対する指揮監督権を持っていないと解されることから、担当部長に類似すると言うべきかもしれませんね。
副校長と教頭
次に分からないのが副校長と教頭の関係性です。どちらも校長を「補佐」するポストではあるのですが、ならばどちらかだけで良いじゃないかということになりそうです。
それが2つもあるということは「補佐」のありようが違うということになりそうですよね。
まずは法令上の定義から確認してみますね。
副校長とは、校長を助け、校長の命を受けて校務を司る学校職員をいいます。
教頭とは、校長及び副校長を助け、校務を整理し、必要に応じ生徒の教育を司る学校職員をいいます。
ということは、教頭が補佐するのは校長と副校長であることから、まずは副校長のほうが教頭より格上かなということが分かります。
次に具体的な仕事の内容に違いがあります。副校長の仕事は「校務を司る」ことであり、「校務を整理し、必要に応じて生徒の教育を司る」のが教頭の仕事です。
「校務」というのは学校運営に必要な業務の全てを言います。大別、「教育内容の管理」「人的管理」「物的管理」「運営管理」の4つに分けられます。
どんな教育をするか、どういう人材配置をするか、施設を物理的にどのように管理するか、財務上学校をどのように管理するか、それら全般に関与することで校長を補佐するのが副校長の仕事ということです。
他方、教頭の仕事は「校務を整理し、必要に応じて生徒の教育を司る」ことです。つまり「校務の整理」と必要ならば「生徒の教育を司る」ことです。
「校務の整理」とは、校務分掌の総合調整、校内人事の調整などの管理上の調整作業を行うことです。具体的に言うと仕事の割り振りと人材配置の調整です。言ってみれば現場主任のような仕事です。「主任」では少し可哀想な気がするので部長というところでしょう。部長にも部下に対する指揮監督権があるように教頭にも所属職員に対する指揮監督権は認められます。
しかも教頭は状況に応じて教壇に立つことがあります。その意味でプレーイングマネージャー、現場の人です。
教頭が部長ならば副校長は「副」の字が付いていることから副社長のような存在と考えて良いでしょう。
別の言い方をするならば、教頭が前線の指揮官ならば副校長は参謀長というところでしょうか。
まとめ
副校長;学校運営全般にわたって校長を補佐。「副社長」
教頭;教職員間での仕事の割り振りと人材配置の調整。「部長」
教務主任;教育計画の立案、その他事項の連絡調整、指導、助言。「企画の担当部長」
主幹教諭;教育計画を除く校務の特定の部分の整理・取りまとめ。「総務の担当部長」
だとするならば、例えば教育計画の立案に関しての意志決定の流れを考えると以下のようになるのではないかと思います。
校長が基本方針を決定
→教務主任による教育計画の策定
→策定された教育計画に関して主幹教諭が職員室全体を取りまとめる
→教頭が具体的に各教職員に仕事を割り振り、人員配置
→校長が正式決定、計画始動
まぁ順当な流れだと以上のようになるとは思いますが、例えば教職員の間で異議が出た場合などは主幹教諭を介して異議を唱えた教職員と意見調整する等の必要があると思われます。そうなると人間関係から教育計画を策定した教務主任の面目は丸つぶれになるでしょうから、日頃から教職員間のコミュニケーションは密に取らねばならないはずです。
恐らく主幹教諭が法令上常設ではなく任意設置であるのは、教務主任が意見のとりまとめをする、職員室全体で話し合って教育計画を策定することが出来ればそれで良いという趣旨ではないかと考えられます。
今回、今までと毛色を変えてこういう事をつらつらと書いたのは、勿論、自分の頭の中を整理したかったのもありますが、各役職の役割とか職掌を辞書的に書いたものはあってもそれぞれの間の関係性がどうなっているのかまで言及しているものを殆ど見なかったからです。書き連ねていて思ったのは、役職名から役割を連想するのは難しいのですが、例えば教頭と教務主任の間などがそうだと思うのですが、役職上教頭が上役なのですが、教頭がプレーイングマネージャーである場合もあることから、必ずしも教務主任は教頭の指揮監督を受けるものではないこと、主幹教諭は原則として教務主任が司る教育計画の策定に介入できない事などを踏まえると、少なくとも文面上、制度としてチェックアンドバランスが働くように予定されているとは思いますね。
ただし、それは飽くまで「文面上」の話であって、制度が額面通りに機能するかどうかは組織内部の各人間のコミュニケーションが円滑に取れているかに掛かるのは言うまでもないでしょう。ありがちな結論ですが、真っ当な話だと思います。
そして、組織全体で円滑なコミュニケーションを図るにはどうすれば良いか、そこまで考えて私共、デジタル・ジャングルは動いています。

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